4人の獣医さんに聞きました!獣医師がTNRに参加する理由とは?【Box竜之介】vol.5

熊本のTNR活動

2019年2月22日の”猫の日”から28日までの期間に熊本の竜之介動物病院にて「野良猫不妊手術(TNR)キャンペーン」がおこなわれました。

今回のキャンペーンで不妊手術が施されたのは、1117頭の野良猫たち。竜之介動物病院では、地域住民に愛されて不妊手術を受けることができた猫として「愛され猫」と呼んでいます。

野良猫が「愛され猫」になるためには、さまざまな人達の力が必要です。

その中でも、獣医さんの存在は欠かせません。

今回のTNRの現場で忙しなく働く獣医さんの姿を追いかけ、その想いをインタビューしました。

 

TNRとは?

TNRとは、「トラップ」「ニューター」「リターン」これらの頭文字をとった活動のことを言います。

Trap :トラップ(捕獲器で野良猫を捕獲すること)
Neuter :ニューター(不妊手術のこと)
Return :リターン(元の生活場所に戻してやること)

簡単にいうと、「猫を一時的に保護し、不妊手術を施し、元の場所に戻す」ことです。

竜之介動物病院の徳田院長が代表を務めるボランティア団体”Box竜之介”がおこなっている「野良猫不妊手術キャンペーン」は、このTNR活動の一環です。

野良猫の不妊手術キャンペーン03
出典:BoxRyunosuke

 

TNRはどうして必要なの?

では、どうしてこういった活動が必要なのでしょうか?

「殺処分」という言葉はみなさん聞いたことがあるのではないかと思いますが、殺処分される猫の半数以上が子猫だということは知っていましたか?

子猫

殺処分の半数以上が子猫

昨年末に公表された環境省の統計によると、平成29年度に殺処分された猫の数は34,854頭。そのうちの6割以上が幼齢の猫、つまり、まだ離乳もしていない子猫です。

不妊手術を施して、生まれてくる猫の頭数を抑制することによって、殺処分される猫を減らそうというのがTNR活動の目的のひとつです。
 

【インタビュー】獣医師がTNRに参加する理由

不幸な野良猫を減らす活動として、TNRに積極的に参加している獣医さんがいます。

今回の竜之介動物病院のTNRにも、日替わりで総勢16名の獣医さんがボランティアで来ていました。

今回は、その中の4名の獣医さんにお話しを聞くことが出来ました。

好きだから、楽しいから

TNR活動 獣医師インタビュー

以前、竜之介動物病院に3年ほど勤務していた横山敏治先生は、関東の動物病院に勤めて3年目になりますが、今でも竜之介動物病院でおこなわれているTNRに度々参加されています。

その理由を横山先生に聞いてみると、「ここに来るのがただ単純に楽しいんですよ」と、率直に答えてくれました。

「徳田院長や竜之介動物病院のスタッフが好きなんです。僕は、徳田院長と仕事がしたくて来てるだけなんですよ。徳田院長といると、普通では見れない景色が見られるんです。それが猫助けになって殺処分が減るなら尚良いなと思っています」

TNR活動 獣医師インタビュー

小さい頃から現在に至るまで、ずっと犬と一緒に暮らしていて、これまでの人生の中で犬が居ないことがなかったという横山先生が獣医師になったのは、ごく自然なことだったのかもしれません。

動物との暮らしが楽しいものであると同時にかけがえのないものであると知っている横山先生は、ごく当たり前のようにTNRを楽しんでいるようでした。

「低いところから高いところを目指すためには努力しなければいけないんです。僕は、まだまだ徳田院長には追いつけないけど、院長が楽しくて、自分が楽しければそれで良いかな」と、どこまでも”楽しい”という感覚を大事にする横山先生。

「人手が足りなくて、現場が忙し過ぎるとギスギスするでしょう?だから、自分がいることで、ここの現場に余裕が生まれれば良いなと思っています。そうやってみんなが楽しくTNRができればと良いなと」

TNR活動 獣医師インタビュー

とは言え、獣医さんにとって、TNRに参加するということはそう簡単なものでもないようです。

「獣医師と言っても、仕事としてやっていく以上、できないことは正直いっぱいあるんです。だから全国の獣医師の中にも、こういった活動がやりたくてもやれない、うらやましくても参加出来ない、そういう獣医師はきっといっぱいいるんじゃないかな」

では、今後どうすればTNRは広がっていくのでしょうか?

TNR活動 獣医師インタビュー

その問いに横山先生は、「TNRが広がっていくためには、行政がもっと関わることが重要」だと明言します。

では、そのためにはどうすれば良いのか?

たとえば、野良猫の不妊去勢手術に対して補助金が出る自治体や、譲渡に力を入れる動物愛護センターなどが増えてきました。

少しずつでも行政の方針が変わってきているのは、国民である私たちがそこに興味を示しているからなのだと思います。

「行政がTNRに関わること」

そのためには、多くの人が野良猫問題に関心をもつことが重要なのかもしれません。
 

オペの技術を維持したくて

TNR活動 獣医師インタビュー

林田真琴先生も、以前、竜之介動物病院で働いていた獣医師の一人です。

現在は関東のペットショップに勤めていますが、現在の環境では外科的な処置が少ないことから、自身のスキルを維持するためにTNRに参加されたそうです。

「私の場合は、野良猫を助けたいという気持ちの他に、オペの技術を維持したくてTNRに来てるというのが強いですね」と話す林田先生。

「野良猫のためにもなって、自分の技術も磨かれる。それに、やっぱりここ(竜之介動物病院)の人達が好きなので。ここに来ることの意味は、ひとつじゃないんです」

TNR活動 獣医師インタビュー

林田先生は、小さい頃から動物が大好きで、物心がついた時から、動物のお医者さんになるのが夢だったそうです。

「獣医師になることしか頭になかったから、逆に他の仕事を知らないんですよ。ちょっともったいないことしちゃったかな」と、冗談めかして話す林田先生。実直で素直で素敵な先生だなと、思わず頬が緩みます。

TNR活動 獣医師インタビュー

現在は、ペットショップでブリーダーから預かった犬猫の健康チェックや治療をおこなっているという林田先生。せっかくの機会なので、ちょっと気になっている質問をしてみました。

万が一、売れなかった犬猫はどうなるのか。

「みなさん心配されることが多いんですけど、売れ残った子がすぐに殺処分されるということはありません。動物愛護団体へ譲渡することもありますし、逆に団体さんから保護動物を引き取って、ペットショップで譲渡会をすることもあるんですよ」

TNR活動 獣医師インタビュー

林田先生のこの言葉に心が救われる思いでした。

保護動物の譲渡会を開催するペットショップが増えたり、TNRを率先する動物病院が増えたり、少しずつですが犬猫の環境は変わり始めているのだと改めて感じました。
 

臨床の学びの場として

TNR活動 獣医師インタビュー

中島昂輝先生は、新人研修として、勤務地であるオガタ動物病院からTNRに派遣され、今回でもう4度目の参加となりました。

もはや”新人研修”ではなくなってきていて、そろそろ中島先生が勤務する同病院の新人先生にバトンタッチするのでは?と、まことしやかにささやかれています。とは言え、イケメン先生としてTNRの現場で陰ながら親しまれている中島先生にもまだまだ参加して欲しいのも事実です。

TNR活動 獣医師インタビュー

中島先生は、もともと動物が好きだったことに加え、中学生の頃に見た、獣医師の働く姿を描いたドキュメンタリーに感銘を受け、より獣医師への憧れを強くしたと言います。

「トリマーとかトレーナーとか、動物に関わる仕事はたくさんありますが、テレビで獣医師の姿を見て医療に興味を持ちました。大変だったのは、勉強量ですね。進んだ先の大学では、獣医師になるためには、相当な勉強量が必要だということを思い知らされました」

TNR活動 獣医師インタビュー

代々、先輩達がTNRに参加していることから、自身も参加するようになったという中島先生ですが、実際の病院勤務でここまでの手術数をこなすことは、なかなかないそうです。

「ここでは、いろんな先生達のやり方を直に見ることが出来るし、それぞれの違いも知ることが出来る。それを自分の中に取り入れたりすることもありましたし、ここで経験値を積ませてもらいました」

命の尊さと真摯に向き合いながら新人の獣医さんが育っていく、ここはそんな場所でもあるのかもしれません。
 

TNRの勉強をかねて

TNR活動 獣医師インタビュー

保護動物に関する活動に力を入れているワラビー動物病院グループの筒井崇先生は、TNRの勉強をかねて今回のキャンペーンに初参加されました。

筒井先生の他にも、ワラビー動物病院グループの先生達は、これまでに何度も竜之介動物病院のTNRに参加されています。

そしてなんと、ワラビー動物病院グループでも、2017年から野良猫不妊手術キャンペーンを開始されたそうです。

TNR活動 獣医師インタビュー

「竜之介動物病院のTNRのやり方を真似して、ワラビー動物病院グループでもTNRをおこなうようになりました。実際にオペに必要なものを竜之介動物病院からお借りすることもあって、回数を重ねるごとにシステムがより良くなっていると感じます」と、現地でのTNRの様子を話して聞かせてくれる筒井先生。

昨年の12月に第2回目のTNRをおこなったそうですが、その中で必要な器具を改良したり特注したりしていると聞いて、これは凄いことなのではないかと感じました。

なぜなら、竜之介動物病院でおこなっているTNRの内容が伝播し、さらに進化していると感じたからです。

TNRの繋がりや広がりというものを肌で感じて、思わずその場で身震いしてしまいました。

TNR活動 獣医師インタビュー

さらに筒井先生は、ワラビー動物病院グループの看護師として共に今回のTNRに参加されていた青山真里亜さんを紹介してくださり、青山さんにもお話しを聞くことが出来ました。

青山さんが所属するワラビー動物病院グループの はとがや動物病院では、SNSなどを用いて保護動物の里親募集なども積極的におこなっているそうです。

「そういった活動が浸透してきているのか、猫を引き取ろうとして、はとがや動物病院のフェイスブックを見てわざわざ猫を探してくれる人もいるんです。病院でもTNRのやり方を聞かれることもあったりして、TNRという活動自体が広がってきているのかなと感じています」という青山さんの言葉に私も嬉しくなりました。

TNR活動 獣医師インタビュー

「このキャンペーンに参加してよかったなと感じたのは、今どんなやり方でTNRや不妊手術がおこなわれているのかが知れたことです。現場でやっていても他の病院のことは分からないし、TNRに対しては知らないことも多いので。この場所が繋がりの場であると同時に、情報の共有の場でもあるのだと感じました。それに、こういう場にくること自体が獣医師にとっても挑戦になると思います」

今回のTNRキャンペーンには、実は未来の獣医さんも参加していました。現在、獣医学部の大学に通う学生さん達です。そんな学生さん達の姿を目の当たりにして、頼もしく感じたという青山さん。

「ワラビー動物病院グループでもTNRキャンペーンをやっていると話したら、そこにも参加してみたいと言ってくれる学生さんがいて、その向上心に関心してしまいました」
 

そんな学生さん達に声をかけると、忙しなく働きながらも、楽しそうに活動していた姿が印象的でした。

TNR活動 学生さんインタビュー

岡山理科大学一年生の佐藤友俊さんは、大学からの案内メールで竜之介動物病院のTNRを知り、自身にとって良い機会だと感じて今回の参加を決意したそうです。

TNR活動 学生さんインタビュー

TNRについては、言葉としては聞いたことがあったものの、詳しい内容までは知らなかったという佐藤さん。

「ここではとても貴重な体験ができたし、TNRというものが大事な活動であることを知ることが出来てよかった!また参加したいです!」と、元気にそう話してくれました。

TNR活動 学生さんインタビュー

瀬尾康太さんも岡山理科大学の一年生で、同じく大学からの案内を受け取り、今回のキャンペーンへの参加を決めたそうです。

TNRというものは知っていたけど活動に参加したことはなく、大学からの案内があったからこそ参加しやすかったと話していました。

TNR活動 学生さんインタビュー

「現場のチームワークや流れ作業が本当にすごい!この経験はきっと大学生活でも活かせると思います。まだ一年生だから、オペなどの技術的なことは出来ないけど、スケジューリングの大切さや、ノウハウをいかに積み上げていくことなど、学べる部分が本当に多かったです!」

瀬尾さんは、こちらから話しかけると、興奮気味にインタビューに答えてくれたのを覚えています。それだけここでの活動が刺激的なものだったのかもしれません。
 

さいごに

熊本のTNR活動

「獣医師がTNRに参加する理由」なんて、ちょっと厳かなタイトルをつけてしまいましたが、この記事でお伝えしたかったのは、TNRキャンペーンに参加する理由は、みなさんそれぞれだということです。

TNRに参加するうえで、「不幸な野良猫を減らしたい」という根っこにある想いは同じですが、その先やそれに付随する想いはみなさん異なります。

手術のやり方に違いがあればそこに学びが生まれたり、TNRに対する考えの違いがあればそこに新しい視点が生まれたり、そうすることによってTNRはどんどん進化していくのではないでしょうか。

さまざまな人達がこの場を共有するということは、とても意義のあることなのではないかと、今回のTNRで感じました。

そしてこういった場を全国の獣医さん達と共有できたら、どんなにか素敵だろうと感じた今回のTNRでした。

【次回のTNRの日程】(予定)

2019年11月22日(金)~11月28日(木)

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